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2009年1月 7日 (水)

人生を肯定するメッセージを伝えたい

 通勤電車の中で、先日このブログで紹介した『約束』(石田衣良著、角川文庫)を読んでいます。
 まだ2話しか読んでませんが、いい短編が続き、物語の世界に吸い込まれるような感覚を味わっています。昨日、心に響いた箇所を次に紹介します。第2話「青いエグジット」という題の物語の64ページです。

 そのときはっきりと謙太郎にはわかった。片足をなくした清人は、自分にとってお荷物などではなかった。わがままと皮肉しか口にしない息子だが、従業員に人並みの扱いをしないリストラ研修に耐える力がだせたのは、なにより清人のおかげだった。清人がいなければ、自分の心はとうに折れていただろう。(引用終わり)

 冒頭の「そのとき」というのは、無気力で引きこもっている息子の清人が、初めての水中ダイビングに挑戦するために、インストラクターと海に沈んでいくのを謙太郎が妻と一緒に眺めていたとき。いつか自分たち夫婦が息子の前から消えなければならないときがくる。そのときには、手も貸すことも、見ていてやることもできない、と悟る。その上で、謙太郎の「息子に対する見方が変わった」瞬間の描写。この物語の大事な分岐点だと思いました。

 家族は一方的な関係ではなく、互いに支え合っているという事実。そして、一見、やっかいと思えるような状況も、見方を変えれば、感謝できることを、改めて教えられたような気がしました。
 こういうところが、私が石田衣良さんの小説を好む理由です。読み手はまったく同じ人はいない、置かれている環境も違えば、性格も違う、抱えている問題も千差万別だけれど、石田さんは、一つの“再生”の物語を通して、読む人すべてを励ましているように感じるのです。
 誰しも何かしらの課題をもって生きているわけで、それを受け入れられなくて苦しんだり、何をすれば良いかわかっていてもできなくて悩むことがあります。いい小説とは、そうした個々の人々から“共感”を引き出し、さらに前を向いて歩かせる力をもつものだと私は思います。そしてこれは、絵画や音楽など芸術全般にも言えることではないでしょうか。
 人生は自分の見方一つで大きく変わっていく。自分自身が運命の主人公なのだ。そんな肯定的なメッセージを、私はこれからも絵や文章や、語る言葉でどんどん伝えていきたい。そして私という存在自体が、それを証(あかし)するような生き方を続けていきたい、年頭にあたって、そう強く思っています。

 小関 隆史

 2009年1月7日

<参考資料>
『約束』(石田衣良著、角川文庫、平成20年12月15日10版発行)

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