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2011年3月 4日 (金)

わんだふる・わーるど(51) ミスターカットマン

 現在地に引っ越して来てから、もう3年以上家族で通っている理髪店がある。いわゆる近年増えてきたカット専門の“1000円カット”の店だ。
 そこに3人いる美容師さんは、ベテラン順に、30代半ばの男性、40代の主婦、20代の男性で、それぞれに持ち味がある。中でも私のお気に入りは、30代半ばのMさん。カットがすごく丁寧で上手なのだ。
 だか、悲しいかなこの店では指名はできない。そもそも、そういうコンセプトの店ではない。しかし、指名料を払ってでもお願いしたいほどMさんの腕はいい。以前、私より先に入店した初老の男性が、Mさんではない美容師に担当してもらうのを避けるため、「お先にどうぞ」と親切めかしく私に順番を譲ってくれたことがあった。私は、すぐに事情を察知したが、その男性の好意(?)を素直に受けた。

 さて、昨日は久しぶりにMさんに担当していただいた。私が鏡の前に座ると、Mさんは「今日はどうしましょうか?」とは尋ねずに、すぐに引き出しからバリカンを取り出し、鏡の中の私に、「3ミリでしたよね?」と微笑みながら声をかけた。「ええ、いつも通りで…」と私。
 3ミリというのは、サイドの刈り上げに使うバリカンの長さ設定のことだ。ただし、Mさんは私のような短髪に対しても、バリカンを使うのはほんの裾(すそ)の方だけで、ほとんどの部分はハサミで丁寧に切り揃えてくれる。私はいつも彼に対する信頼と、仕事に集中してもらいたさもあって、理髪中は大体目を瞑っている。そうすると、Mさんは細やかな指先の動きで、裾から頭頂部にかけてまるで“段々畑”を刈りそろえながら登っていくように、ハサミを滑らせ、美しいグラデーションを描いていく、そんな様子が感じられる。また、時折、Mさんが、かすかな声で「よし」という声を漏らすのも、一所懸命さの現れと感じられて、うれしい。

 初めてMさんに担当してもらった時、わずか1000円の代金でここまで丁寧な仕事をしてもらえたことに感激し、別れ際に、「丁寧にカットしていただいて、ありがとうございました」と心から礼を言った。それからは、意識して、「いい仕事をしてますね」「いい感じに仕上げてくださって、ありがとうございました」などと、その時の気持ちを言葉で表すようにしている。昨日も、「丁寧にやっていただいて、ありがとうございました」とMさんの目を見て笑顔で礼を言うと、「いえ、いえ」と謙虚に言いながら、うれしそうに微笑んでくれた。

 私は、いい仕事をすると、それは周囲に伝染していくと思っている。私自身、飲食店やブティックなどで、心からの接待をしてもらったり、プロとして「すごい」と感心させられたりすると、こちらが客であっても必ず礼を言い、「よし自分もいい仕事をしよう」と心を新たにする。

 最後に、“最高のサービス”を受ける極意を紹介したい。それは、相手を褒めることだ。ただし、それは単なる技術ではなく、心から相手に感謝しないと相手の心に響く褒め言葉にはならない。代金を払ってサービスを受ける側だという意識を超えて、相手の善意に対して謝すること、それが大切なポイントだ。

 ミスターカットマンたるMさんの小声の「よし」を聞くたびに、人間は、報いの有る無しを超えて、「相手に喜んでもらいたい」という本質的な願いをもっていることを、改めて感じる。
 そうした相手の善意を互いに感じられる人々が大半を占めるようになれば、戦争などはたちまちなくなってしまうに違いない。

 小関 隆史

 2011年3月4日

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コメント

TKさん おひさしぶりです。

Mさん、素敵ですね~shine また、嬉しさとか 感謝の気持ちを
ちゃんと言葉にして伝えるTKさんも素晴らしいですね;:゙;`(゚∀゚)`;:゙

ジョージの近所にもよくいくクリーニング屋さんがあって
そこの方々は みんな感じがいいんです。

そのクリーニング屋さんはスーパーの中にあり、ジョージはいつも
洗濯ものを持っていく→スーパーで買い物→出来たクリーニングを受け取る
という流れなんですが

そこのスーパーはとても安く(笑)いつも買いすぎて 荷物が一杯になってしまいます。
荷物のほかにクリーニング(ワイシャツ、ハンガー仕上げをそのまま受け取ります)は
ちとキツイんですが・・・(笑)

その日はNさんという最初からいた方だったんですが
買い物が終わって引き取りにいったら

なんとひとまとめにして 持ちやすいようにビニールの袋に入れておいてくれました!(そのクリーニングやさんは 専用の手提げ袋を最初にいただくので、各自それを使いますが、ジョージはエコバッグ以外にも持つのがめんどうくさく、いつも使わないのですsweat02
小雨ふる寒い日で 近くに車も止められなかったので
本当に助かりました(*^_^*)

心からお礼を言いましたら

「いえいえ 私のできるサービスは これくらいですから」と笑顔で答えてくれました。


これからも ジョージはそのクリーニングやさんに 通い続けます(*^_^*)

ちょっとした心使い、ありがたいですね♪

ジョージさん

 お久しぶりです。
 コメント、ありがとうございました。
 お気に入りのクリーニング屋さんの話、Nさんのやさしい心遣いに
心温まる思いがしました。
 荷物が多い時って、いっぱい袋があると持つのが大変ですよね~。
 どういう場面にしても、相手の方の思いやりを感じた時、その事自体
がうれしくて、ハッピーな気持ちになりますよね。

 ジョージさんの情景描写が上手なので、ジョージさんのうれしそうな
表情までまぶたに思い浮かんできました。
 ポスティングジョイの鍵の話も、おもしろかったです。

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