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2011年3月 1日 (火)

岡本太郎著『今日の芸術』を読んで(1)

 最近、文庫本の『今日の芸術 〜時代を創造するものは誰か』(岡本太郎著、光文社刊)を読み始めている。先月の26日、生誕100年を迎えた岡本太郎の足跡をたどる試みは、3月8日から東京国立近代美術館で開催される「生誕100年 岡本太郎展」をはじめ、NHKのテレビドラマ「TAROの塔」などさまざまな形で行われようとしている。その流れの中で本書も書店の目立つところに置かれていた。

 彼は油絵などの平面作品だけでなく、立体造形も多く手がけ、彼を象徴する代表作の一つは、1970年に開催された「大阪万博」のパビリオンとなった「太陽の塔」だ。当時、5歳だった私は、両親と一緒に京都から大阪まで出かけ、太陽の塔に登ったことを強く覚えている。細長く上に伸びた塔内の薄暗い急な階段と、内部に何かしらの展示がされていたことを思い出す。
 長じて美術の道に進んだ私だったが、岡本太郎の芸術にさほど興味を抱くことはなかった。率直に言って、作品からエネルギーは感じるものの、「芸術は爆発だ!」などの岡本太郎の言動や、焦点が定まっていないようなその表情に何か違和感を感じていたことが大きい。そうした彼の表面的な奇抜さが、どうしても受け入れられず、彼に対する理解を妨げていたのだろう。
 そうした彼への偏見〜偏った見方が薄れてきたのは、近年のことだ。彼の短い言葉を集めた著作の一つを読んで、しびれるような感動を覚えた。それは、異動で職場を離れる後輩を勇気づける書籍を探していたときのことで、パラパラとその本のページを繰って、短いフレーズを読んだだけで、大いに勇気づけられた。

 このたび、彼の「芸術論」というよりむしろ「生き方」「人生のあり方」をしるした本書を読んでいて、またまた彼に対する見方が変わっていくのを感じている。
 彼の作品から受けるイメージとは裏腹に、その語り口は実に穏やかで紳士的だし、論旨も明快で論理的だし、何より真理を穿った内容にみちている。
 本書から、芸術に対する彼の基本的な考え方を次に紹介しよう。

 芸術は、ちょうど毎日の食べ物と同じように、人間の生命にとって欠くことのできない、絶対的な必要物、むしろ生きることそのものだと思います。
 しかし、なにかそうでないように扱われている。そこに現代的な錯誤、ゆがみがあり、またそこから今日の生活の空しさ、そしてそれをまた反映した今日の芸術の空虚も出てくるのです。
 すべての人が現在、瞬間瞬間の生きがい、自信を持たなければいけない、そのよろこびが芸術であり、表現されたものが芸術作品なのです。(同書16ページ)

 この「よろこびが芸術」とする岡本太郎の考えに私は深い感銘を覚えた。
 生命と芸術とを切り離さず「ひと連なり」だとする考え方は、「美とはそこに生命があらわれていることである」(谷口雅春著『生命の實相』頭注版13巻)とする生長の家の芸術観に非常に近いと思う。
 まだ本書を読み始めたばかりだが、今から60年近く前に書かれた本なのにまったく古さを感じさせないことに驚いている。この先の内容がとても楽しみだ。(つづく)

 小関 隆史

2011年3月1日

【参考資料】
○『今日の芸術』(岡本太郎著、光文社刊)光文社知恵の森文庫
 ※初版は1954年

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