TKの本棚(22)『カラフル』(森絵都著、文春文庫)
「偏見を捨てて、まっさらの目で自分の人生を、そしてこの世で自分と共に生きてくれている家族、友人、同僚…を改めて優しい眼差しで見つめてみたい」、一読後、そんな気持ちにさせてくれる大人のための児童書。
少しだけ、物語の舞台設定を紹介すると…
主人公の魂は、地上で大きな過ちを犯して死んで肉体を離脱した。が、幸いにも“抽選”に当たって、地上での再修行の機会を与えられる。その再修行の場は、睡眠薬で自殺を図ったが奇跡的に生き返ったという中学生の男の子の体に入り、人生を送ること。それは、期限付きの「ホームステイ」のようなもので、そこでの課題は、「前世での過ちを思い出すこと」。それができれば再び輪廻転生のサイクルに戻れ、できなければ、露(つゆ)のようにはかなく消えてしまう…。果たして、主人公は、新しい家族のもとでホームステイしながら、目的を達成できるのか――。
輪廻転生、生きることの意味などの宗教的なテーマを扱いながらも、説教じみたところはなく、いつしか物語の中に引き込まれる。登場人物も、援助交際を行う中2の女の子、不倫の過ちを犯した母親、利己主義の父親、そっけない兄…と多彩。主人公がそうした周囲の人々との触れ合いを通して、人に対する見方が、どう変わっていくのかが見物。
私たちは悲しいかな、周囲の人々を一面的に捉え、その人のすべてを知ったような気になってしまい勝ち。でも、人は単色ではなく、一口で表現し切れないほど多面的で、豊かな彩りを持つ存在。まさしく一人一人は“カラフル”なのだ。
そして、本来は、それぞれがもっともっと自分の可能性を信じて、自由に伸び伸びと生きていいはずなのに、自分自身を「こういう存在」だと心で決めつけ、自縄自縛してしまい勝ち。そんな“迷える子羊”に、「もっと客観的に自分と身の回りを見つめ直してみませんか? 世界はもっと彩り豊かで美しいよ」と作者は、この物語を通してやさしく問いかけているように感じた。
原作は、昨年、2010年に本書と同名でアニメーション映画化された。
小関 隆史
2011年7月5日








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