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2011年10月18日 (火)

上田紀行・東工大准教授の記念講演を聴いて(1) 〜今、絆の質が問われている

 昨日(10月17日)、新宗連(新日本宗教団体連合会)の結成60周年記念集会が、東京・渋谷の渋谷公会堂で行われ、生長の家も招待を受けた。
 生長の家はこの新宗連には加盟していないが、近年、環境問題に関して、立正佼成会などの他の宗教団体と協同して取り組み始めていることもあり、教団の中で渉外的な役割を担う出版・広報部の一員として、上司に随行する形で喜んで出席させていただいた。

 この日の記念集会では、新宗連の60年の歩みを映像で見た後、東京工業大学大学院准教授で文化人類学者の上田紀行氏の記念講演があり、45分間、ノートとペンを手に大変、興味深く耳を傾けた。
「未来への種をまく宗教」と題したその講演では、「今、絆の“質”を問うべき」という提起に始まり、後半には、「身内だけに信仰を伝える“家”の宗教にとどまらず、今、救いを待っている人のところに出かけて行ってほしい」との宗教者(界)への期待が熱く語られた。

 前半で特に印象深かったのは、大震災以降、「絆」という言葉が至るところで目につくようになったが、「人を生かす絆」か、それとも「人の心を縛る怖い絆」なのか、その“質”が問われているとの提起。
 人を生かす絆の具体例としては、上田氏が教えている大学院に入った女子学生の体験が興味深かった。
 神奈川県の湘南に住んでいた彼女は20歳の時に、生きる意味を見失って悩み、ある夜中に家出をした。トボトボと街を歩いていると、やがて一軒のお寺が目に入った。しかし、その門は閉ざされていて、そこでふと、彼女は考えた。ここでインターホンを押してしまうと、「今、何時だと思ってるの!」と叱られるに決まってる、と。だから、何もアクションを起こせずに、再び、歩き始めた。すると、今度は、十字架を掲げたキリスト教会が目に入った。試しにドアを押すと開いたので中に入り、誰もいない礼拝堂のイスに2〜3時間、ずっと座っていた。すると、いつしか胸のつかえがすーっと降りていって、楽になり、以後、二度と家出をすることもなく、人生を前向きに生きられるようになったという。
 この話を本人から直接聞いた上田氏は、彼女が誰にも会わずしてこのような体験を得たことに注目。彼女にその時の心境を尋ねると、「どうしても我慢できなくなるほど苦しくなったら、ここ(礼拝堂)に来て叫べば誰かが出て来て助けてくれると思えた。でも、今はまだ少し余裕があるから大丈夫と思えた」と。それを聞いて上田氏は、「(たとえ真夜中でも自分を受け入れてくれるところがあると知ることで)彼女は“支え”を感じられたから、前に進むことができた」と気付いたという。
 このエピソードを紹介した後、「支えがあると思った人間は自由になれる」と上田氏が語った言葉は、ズシリと私の胸に響いた。その人の支えとなれる絆、これが「人を生かす絆」。

 一方、「人を縛る怖い絆」の例としては、先の大戦後に裁かれた日本のA級戦犯の誰もが、「個人的には戦争には反対だったが…、組織としては賛成せざるを得なかった」とか、個人としての自らの意志を抑えて、所属組織(軍隊)の中での立場や組織を守ることを優先させたことを挙げた。いわば、組織の「絆」に縛られて、自分の意志で状況を変えるような行動がとれなかったという反省。
 この「自分で状況を作っていく」ということは、日本人には苦手な人が多い。しかし、今は、その能力が問われているのではないか、「もっと日本人は自由があってもいい」と上田氏は訴えた。
 こうした話の流れの中で、上田氏は、宗教者に対して、「われわれ(人々)をもっと自由にしていく(のが本来の)宗教なんだ」と声を大にして言ってほしい、と期待を込めて聴衆に語りかけた。

(つづく)

 小関 隆史

2011年10月18日 

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コメント

凄く同感できます。

今、・・・少なくとも、立場は、違えども、私自身の環境と重なる部分が多くて。。

丁度、そのような、転換期に差し掛かっている気がしていたんです。

じっくりと読ませていただきまして。 気持ちが楽になりました。。

ありがとうございます。

感謝 tao 拝

田尾さん

 この記事を読んで、気持ちが楽になってくださったとのこと、うれしいです。
 何の恐れもない、自由で伸び伸びとした気持ちで日々を過ごしたいものですね!
 

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