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2015年1月22日 (木)

人間を理解するということ

【今朝のごあいさつ 〜2015年1月22日】

 おはようございます。
 今朝は、宗教学者の島薗進さんと、日本のホスピス(終末期医療)の草分け的な存在である柏木哲夫さん(1939年生まれ。大阪大学名誉教授、淀川キリスト教病院名誉ホスピス長)との対談を読んで学んだことを紹介します。
 柏木さんは、クリスチャンで精神科医だったのですが、日本にホスピスをつくりたい一心で海外に行き、「体の痛みを取り除いてあげることも大事」と学んで、帰国後、猛烈に内科の勉強もした方です。要するに、ホスピスの専門医として、「信仰と心と体」の3つを身につけて、トータルに患者に接することが必要だ、と思って努力された方です。
 この柏木さんは、「人間をどう理解するかというのは、ホスピスとか緩和ケアの世界ではとても大切なこと」とおっしゃり、いろんな患者の最期をみてきて、次の2つのことを学びました。
 一つ目は、「人は生きてきたように死んでいく」。もう一つは、「人は自分の責任外で起こったことを引きずりながら死んでいくものだ」ということ。
 一例として、47歳で卵巣ガンで亡くなったある女性は、ずっと一人暮らしをしていた。ホスピスのスタッフがお世話をしようと近づくと、はねつけられて、コミュニケーションが成立しない。明らかに壁をつくっていたのです。つらい過去を持った人だろうと思って、彼女の姉に話を聞くと、彼女は、5歳の時に両親が離婚して、経済的に非常に苦しくて、中学卒業と同時に町工場に就職。そこでも工場長からいじめに遭って辞め、高校に行きたかったがいけなくて、転職。やっと結婚した相手がアル中で暴力を受けて離婚…という大変な半生を送ってきて、人間不信に陥り、果ては47歳でガンを発症したということが分かったのです。
 彼女にしたら、心を開いたら裏切られるという体験をずっと繰り返してきて、自分がちゃんと生きていくためには、自分のまわりに壁をつくって人が入ってこないようにしないと自分を保てない、と思ったのですね。
 そんな話を聞くと、彼女がそういう状態になったもとには、家庭的な問題、親の離婚ということがあって、それはまったく彼女の責任外で起こったこと。それをずっと引きずっているんだと思うと、壁をつくられても、少なくとも腹は立たない、というわけです。
 それで、この柏木さんは、この患者さんが亡くなった後、スタッフと彼女のケアの振り返り(反省)を行った最後に、
「結局この人は壁を崩さずにそのまま亡くなったけれど、ホスピスというのは、その人がその人らしい人生をまっとうするのを援助することだから、まあ、いいんじゃないかとか、何かそんなまとめをした」。
 この話を聞いて私は、人間を理解するのはなかなか難しいことだけれど、今のその人の状態があるのは、過去にいろんな体験があってのことで、それを汲み取れるかどうかが、非常に大事だと思ったのですね。
 ひょっとしたら、その人のことを何も知らないで、ああだ、こうだと言ったり、思ったりして、相手を裁いているのかも知れない。
 この患者さんのように、壁をつくって何も言わない人がいるかも知れないけれど、それを無理にこじ開けるんじゃなくて、そのまま受け入れて見守る、その一方で、相手への理解を深める努力を続ける、というスタンスが大事じゃないか、と思うのです。
 柏木さんは、こうも語っています。
「そういう過去を引きずりながら生きてきた人に真摯に対応するとときどき、殻が完全に破れないにしてもちょっとだけ隙間をあけてくれて、そこから入れてもらえる場合がある。そこから入ることができたら、本当にやりがいがある」と。
 私は、やはり、祈りだと思いますね。
 相手の幸せを願う気持ち、相手の輝きを祈りつづけること。
 それが、真摯な対応となり、相手の心に光を射し込むんじゃないかと。
 祈りと言っても、そんな大げさなことではなくて、
 その人の微笑みを思い浮かべること。
 輝きを思い浮かべること。
 ただそれだけでもいいと思うんです。
 相手を変えようとするんじゃなくて
 まず自分が変わる。
 すべては、ここからですよね。
 今日も、お元気で!
 お互い、いい一日にしましょうね。
【参考資料】
○『宗教・いのち・国家 島薗進対談集』(島薗進著、平凡社刊、2014年10月24日初版)

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