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2015年3月 6日 (金)

生きることの意味を考える 〜『生きる哲学』(若松英輔著)を読んで(1)

【今朝のごあいさつ 〜2015年3月6日】
 読んでいると、ふと、自分の生き方について考えさせられる本と出合えたときは、本当にうれしい。
 昨日、この春に中学を卒業して次の進路に進む息子の入試に同行した。
 親にも面談があるというので、親子3人で学校に向かったのだ。
 長い待ち時間の間、『等伯』(上巻)を読了し、続けて、本書『生きる哲学』を読み始めた。
 著者の若松さんは、井筒俊彦さんを紹介した書籍で知った批評家だ。
 彼の文章にとても惹かれるものがあり、図書館で本書を手に取ったのである。
 本書は、構成が少しユニークで、第1章から第13章まで、それぞれの章に、
「生きる」「彫る」「祈る」「喪う」「聴く」「見る」「待つ」「感じる」等々の動詞のタイトルが付いていて、それぞれに、作家や芸術家、宗教者、社会活動家、哲学者など、特定の一人の生き様を紹介しながら、テーマについて論じていくという内容となっている。
 序章「生きる 言葉と出会うということ」を読み始めて、驚いた。
 そこでは、「言葉」について論じられていて、そこに、昨日(3/5)の「今朝のごあいさつ」で紹介した、『古今和歌集』の序文が、まったくそのまま掲載されていたからだ。
 人生は、このように絶妙にリンクしていくから面白い。
 自分が関心を寄せる事物を確実に引き寄せる。
 心というものの神秘を垣間みる思いがした。
 著者の若松氏は言う。「言葉という表現を意味の塊と置き換えるとよくわかる」と。
 通常使う「言葉」という文字からは、話し言葉や書き言葉を連想させるが、その本質は
「意味の塊」だと言うのである。
 だから、この世界は、言葉で満ちているのだ。
「朝、日が昇るのを見て美しいと思う。それにとどまらず、ある充実を感じる。あるいは深い畏敬の念に包まれる人もいるかもしれない。雨のなかにたたずむとき、静かな大地のうごめきを感じる者もいるだろう。鳥のさえずり、川の流れ、私たちは万物の動きに意味を感じることができる。逆の言い方をすれば、世界は人間に読み解かれるのを待っているようにさまざまな意味を語っている」(『生きる哲学』P13)
 これを宗教的に言えば、森羅万象は“観世音菩薩の教え”が表されたものであり、意味を持っているということである。
 そこから何を読み解くか、は私たち次第である。
 なぜなら、その言葉、すなわち意味の塊は、私たち自身の内にあるものなのだ。
 だからこそ、「言葉」の意味が「分かる」し、「分かる」とは、「私たちの内にある叡智から分かれ出る経験をさす」(哲学者の池田晶子さんの言葉)のだから。
 もう少し、言語の姿にとらわれない「コトバ」について考えてみよう。
「私たちが文学に向き合うとき、言語はコトバへの窓になる。絵画を見るときは、色と線、あるは構図が、コトバへの扉になるだろう。彫刻と対峙するときは形が、コトバとなって迫ってくる。楽器によって奏でられた旋律が、コトバの世界へと導いてくれることもあるだろう」(同書P14)
 だから、若松氏は、「コトバの感覚をひらく」という表現で、表われの奥を感じることが求められているのだと説く。
 彼はまた、本書で剥製(はくせい)のように静止したものではなく、「生きた哲学」を語ろうとしている。
「作られた分類、概念は止まっている。しかし、実在はいつも動いている。剥製を眺めることで、大きさや外観を理解することはできるが、そこに命を感じることはない。誰もが簡単に用いることができる剥製のような概念は、人生の困難にあるときには何の役にも立たない」(同書P17)
 私は、まだ第1章「歩く 須賀敦子の道」を読んだだけだが、何度も目をつむり、自分の人生を回想しながら読んだ。
 それほど、引きつけられる文章だった。それはきっと著者の狙い通りだろう。
 そうして、私は、本書で紹介されている何人もの「私の人生」と、これから出会うに違いない。
 今日も、どうぞ、お元気で!
【参考資料】
○若松英輔著『生きる哲学』(文春新書、2014年)
Ikirutetsugaku20150306

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